ローリー ロング 3
1952年ピッツバーク生まれ 2017年ラグーナビーチ没
彼は太り(体重120キロを超えた)、金持ちになり、やがて金を持つ者がみな向かう場所へと向かった。カリフォルニアである。その地で、カリフォルニアキリスト教徒カリスマ教会を創設した。信徒の数は多く、『メッセージ』を伝えるのはいたって容易だったので、風刺詩やユーモア詩を書く時間さえあった。それを読んで彼は笑い、その笑いがテクストをいくつもの鏡に変え、そこには一点の染みもなく、テキストのどこかの部屋にひとりでいる、または彼の友人、伝記作家、代理人と称する、彼と同じくらい太った見知らぬ人々と一緒に別の慈善ディナーに出ている最中の彼の顔が映っていた。彼はたとえば、レニ リーフェンシュタールとエルンスト ユンガーがセックスする詩を書いた。百歳の男と九十歳の女。骨と骨、死んだ組織同士のぶつかり合い。なんということか、と悪臭漂う広い書斎でローリーは言った。老いたエルンストがドイツ人売女を容赦なく犯し、彼女はもっと、もっと、もっととせがむ。いい詩である。老いた男女の瞳は燃えて、羨むばかりの輝きを放ち、老いた顎がきしむほどお互いを吸い合い、それとなく教訓を与えながら読者を横目で見やる。その教訓は明白だ。民主主義の息の根を止めなけれほど生き永らえさせるのか。何が彼らを不死に近い存在にしてしまうのか。流された血?聖書の飛行?跳躍した意識?カリフォルニアキリスト教徒カリスマ教会は地下に潜った。エルンストとレニが、羊の群れる谷間の燃えさかる二匹の犬のように、離れられずに交わり続ける迷宮。盲目の羊たちの谷間で?催眠術にかかった羊たちの谷間で?俺の声が羊どもを
催眠状態にするのだ、とローリーロングは考えた。だが長生きの秘訣はなんだろう。純潔。さまざまな側面から調べ、千年期を創出することだ。そして指先が、「新しい人間」の身体に触れたと思う夜もあった。彼は20キロ痩せた。エルンストとレニは彼のために天上で交わっていた。それが熱気に満ちてはいるが低俗な催眠療法ではなく、真の「燃える聖餅」であることを彼は理解した。
こうして彼は完全に発狂し、「狡猾さ」が彼の身体の隅々まで行き渡った。彼には金、名声があり、辣腕弁護士がついていた。ラジオ局、新聞、テレビ局があった。アメリカ上院に友人が何人もいた。そして揺るぎない健康を手に入れるが、2017年3月のある日の正午、ボールドウィン ローシャという名の黒人青年に頭を吹き飛ばされる。(終)
ロベルト ボラーニョ 『アメリカ大陸のナチ文学』より転載
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今日から世間は三連休になっているらしいが、リーマン社長を辞めてもう22年ぐらいはたつのだから休みの長さなんていう感覚はゼロで、それが長いんだか短いんだか、嬉しいのか悲しいのかさえさっぱり実感っていうものが僕にはない。実際に社会的一般平均感覚的尺度なんてものが果たしてあるかどうかは知らんが、きっとそれがあるとすれば酷く乖離しているのがきっと猫の生活というもので、猫には明日も昨日もなくて今、ここしかないのだろう。30連休でも300連休でも好きなだけ休んでみれば、労働ってなんだろう?という基本的な疑問を少しは正面から考える人も増えるとは思うが、休んでいるうちに餓死する人が大半だとするとしたくても出来ないのが「休む」という行為の本質なのかもしれんなあとも思う。裕福とは実際には片務的な行為と状態なのだ。
それにしても3連休で高速道路はどこも20キロ30キロと渋滞で、こんな極暑の日に渋滞の車内ではイライラがつのって不快な行楽になんて行くのはよほどの物好きかオ馬鹿しかいないんだろうと思うが、そのよほどのオバカが日本の大多数というのはどうしたことだろうと毎度毎度思う。こういう大多数がきっと阿部に投票しているのだろうなあと思うと確かにうなずけるような気もするが、、。
コウケンテツという男子の料理家がいるが、彼の焼豚のレシピを見つけて、普段の焼いて煮るレシピとは異なるので、さっそく安いロース肉を500グラムぐらい買って、一晩つけ汁につけ込んで200度のオーブンで両面を18分ほど焼いてみたらこれが実に良い出来で、ラーメンでもチャーシュー飯でもなんでも来いというぐらいの良い出来だった。
先週買った巨大桃は13号で、1個平均で400グラムもある。これが15個入っていると6キロぐらいで何と2000円とバカ安だから、1個150円で極上の超甘い桃が買えるのだから、今なら甲州に行って桃狩りをするのが良いだろうと思う。共選所という場所が10ぐらいあるのでこれを3つぐらい回ると良いのが見つかると思う。
桃を毎日3つ4つ冷やして食べて、自家製のチャーシュー飯なんて食っていると栄養過多で病気になるという典型が僕の今年の健康診断だった。血液がドロドロでこのままでは脳梗塞か心筋梗塞のリスクが高いという医師の診断で、さっそく投薬開始と相成った。高コレステロール血症治療薬 ピタバスタチンを夕食後1錠服用ということで28日分もらった。まあこれで直るのなら楽で宜しいかねとも思う。
大体、毎日好きなごちそうを好きなだけ自分で作って食って運動も労働も全然しないで食っちゃ寝で風呂でゴロゴロ昼寝と読書だけの暮らしなんだからデブになるに決まっている。贅沢病ということで北朝鮮のデブと同じようなもので、それでも痛風や糖尿にまだなっていないのが不思議なくらいである。ミサイル打たないだけまだ無害だが、大体もう欲望や興味というものが多くはないのだから、このまま心臓疾患とか血液疾患でコロッといけば予定調和みたいなものではある。貧乏で死にたくても死ねないのと比べるとラッキーなほうだろうと思う。